「飲食店での新人教育のコツとは」人材採用・教育のノウハウを学ぶ

「飲食店での新人教育のコツとは」人材採用・教育のノウハウを学ぶ

飲食店での新人教育のコツとは何か

「企業は人なり」という言葉があるように、すべてのビジネスはそれに携わる人の質で成否が決まってきます。

接客業である飲食店の場合はその傾向がさらにホールスタッフのレベルが高くなければ顧客様に満足してもらえる接客ができません

キッチンスタッフのレベルが高くなければおいしい料理をすばやく出せません。
しかし誰でも最初は素人なので、レベルの高い人材になるためには教育が必須です。

つまり新人教育がしっかりできるかどうかが顧客満足度の高低につながり、結果的に自店舗の売上に直結するのです。

マニュアルのメリットと活用


飲食店が育てなければならない人たちの特徴は1987年から2003年に生まれた人たちを「ゆとり世代」別名「さとり世代」と言います。
年齢で言えば現在15歳から31歳までの人たちです。

この世代の特徴は、メンタルタフネス(ストレス耐性が強いということを意味しており、ストレスフルな状況下でも良いパフォーマンスを発揮できる人材)が低いことです。

ですから新しい仕事に就いた場合でも、仕事上や人間関係上のちょっとしたストレスに弱いため、「こんな理由で」というようなものでも簡単に辞めてしまう人が多いことです

しかし飲食店のスタッフのボリュームゾーンはまさにこの「ゆとり世代」であるため、そのような人たちを上手に戦力化していかなければなりません。

ゆとり世代はマニュアル世代
そのような人たちを育成、教育するうえで重要なことが「マニュアル」があることです。

なぜならゆとり世代が成長してきた時代にはすでにインターネット全盛で、わからないことがあれば自分で考えるよりも、ネットで調べてしまえばすぐに答えが得られる、ということが当たり前のようになっていたからです。

マニュアルのメリット

しかしゆとり世代の人たちにとってだけではなく、飲食店経営者にとってもマニュアルは必要です。
なぜなら、ビジネスを運営していくうえで重要なのは仕事のクオリティの安定度だからです。

これはどういう意味かというと、具体的にはAさんが接客した時にはお客様が非常に満足してくれるが、Bさんが接客した場合には不満やクレームが出る、
という事態が起こってしまうと、
つまり自店トータルの接客レベルはマイナスに引っ張られるので落ちてしまうということです。

これは料理についても言えます。Cさんが作ればおいしいがDさんが作ってしまうとまずい、ということでは、飲食店の評価は全体では下がってしまうのです。

ですから、飲食店を経営する上では、Aさんが接客してもBさんが接客しても「感動」まではいかなくても、一定レベルの満足を与えられるようになっていることが必要です。
また調理の場合もCさんが調理してもDさんが調理してもその料理はしっかりおいしいということが必要なのです。

それがマニュアルを活用することの最大のメリットです。
またスタッフ自身にとってもマニュアルがあれば、何をどうしてよいかのという答えが最初から与えられているのでストレスを感じずに仕事をすることができ、退職しないで済みます。

それもメリットの1つです。
さらに仮に初めて飲食店の店長になった人でも、マニュアルがあれば何を教えてよいのかわかります

店長が教えられない場合でも、マニュアルがあれば先輩スタッフが店長や経営者が教えてほしい内容で教えてくれます。
このように新人への教育内容が、誰が教えても同じようになるため、目指す自店舗の姿に近づけるという点もメリットでしょう。

◎マニュアルのデメリット

しかしもちろん何事でもメリットがあればデメリットもあります。

マニュアルのデメリットは、特に接客の場合に現れます。
それは、スタッフの個性が生かしにくいということと、お客様のレベルに合わせて接客内容が代えられないためマニュアル以上の接客ができないということです。

いわゆる定型マニュアルの弊害です。
たとえばリピート1回目のお客様に対しも、何度も通ってくれているヘビーなリピート客に対しても同じ接客しかできない場合です。

本来は、何度も通ってくれればお客様もスタッフもお互いに顔を覚え、個人としての親しみがわくので、世間話をしたり、そのお客様の好みを覚えていてそれを実現したり、ということを店長や経営者は期待してしまうでしょう。

しかし、マニュアルに沿った接客の場合はそれができません。サービスの限界です

その結果、マニュアル通りの接客はヘビーなリピート客にとっては、自分を尊重してくれていないと感じるかもしれません。接客自体にぬくもりを感じないということにもなるかもしれません。

ですから特にヘビーなリピート客にとってはマニュアル通りの接客は返ってマイナスになりかねないということなのです。
そのお客様は、固定客になっていただけないということになります。

この点がマニュアルの最大のデメリットでしょう。

マニュアルの活用方法

しかしマニュアルのメリットとデメリットを比較した場合、やはりメリットの方が大きいのが事実です。
特にそのメリットを最大限発揮させる活用方法は、2つあります。

1つは教育する場合は常にそのマニュアルに即して行うことです。
店長が自分の経験で教えてしまうと、その内容が明文化されていないので、教えたその時には新人は覚えておいてくれますが、しかし後で新人が自分で振り返った時に再現できません。

しかしマニュアルに沿った教育内容であれば、店長がいない場合でも新人は自分でマニュアルを開いて、何をどうすればよいのかを振り返ることができます。

2つ目は、仕事中に接客内容や調理内容をチェックして指導する場合や、店長や経営者の意に添わない仕事なので叱る場合でも、マニュアルに即して行うことです。

特に「ゆとり世代」は叱られた内容がマニュアルと違うとその本質的な内容が仮にマニュアルに一致していたとしても、それを表面的にしか理解しません。

したがって教えてもらっていないことを指導された、あるいは教えてもらったことと違うことを指導されたと思い、結果的に店長や経営者への不信感を抱くようになって退職に至ってしまうというケースが多くなっています。

ですから教育する場合でも、日常的に指導する場合でも、常にマニュアルに即していることが活用するうえで重要なポイントです。

このマニュアルに即しているということはしつこいくらいがちょうどよいのです。

誰も教えないという現実

個人店やチェーン店でも教育がしっかりしていない店は誰も教えてくれないということが多いことです。
人が不足しているので即現場にはいるという現実です。
これではアルバイト。バーとは辞めてしまいます。
本来はマニュアルがなくて、も店長でも先輩スタッフでも誰でも同じ内容で教えてくれることが理想です。

しかし現実にはなかなかそうはいかないのです。それどころか、多くの店長、先輩は新人の行った行動の結果だけ見て叱るので、「教える」ということ自体をしないのです。

それはその店長や先輩に悪意があるからではなく、「教える内容がわからないから」ということがほとんどです。

新人が辞めてしまう理由

一般的に新人スタッフが辞めてしまう理由をお話ししましょう。
①仕事の仕方を教えてもらえないため不安になること

②新人スタッフと店長や先輩スタッフの間にコミュニケーションがないこと

③スタッフどうしの人間関係が悪いこと

④職場の労働環境が悪いこと

このうちの1番目の辞める理由はマニュアルが整備されていることで避けることができます。

◎新人教育の原則とはそもそも新人を教育する上では大原則が3つあります。

①それはステップを踏んで教えること
②基本を反復して教えること
③細かいな行動の内容だけではなく、それを支える自店舗の「方針」「理念」をしっかりと教えること

ステップを踏んで教えるとは何かを説明して教える方法です。

新人スタッフはいきなり育つわけではありません。赤ん坊と同じで、最初は「はいはい」、次に「伝い歩き」、そして「直立歩行」できるようになります。

教育とは、そのように相手が徐々に育っていけるように、内容の難易度を優しいものから順に教えるべきなのです。

有名な話ですが、20世紀の有名な軍人である「山本五十六」はこのように表現しています。

①やって見せ
②言って聞かせて
③させてみせ
④ほめてやらねば人は動かじ(動かない)
これを現代に置き換えると
1最初は、まず店長や先輩が見本を「やって見せ」、その仕事がうまくできた場合のイメージを与える
2その作業や接客トークの意味を「言って聞かせ」る

3実際に新人スタッフに「やらせてみる」
4うまくできた部分を「ほめて」やる
このようなステップを踏めば必ず新人は育ちます。

基本を反復して教えること
接客にしても調理にしても慣れてくれば、新人スタッフの頭の良さによっては、自分なりに工夫してより良いものにするかもしれません。

その際の注意点は、店長や経営者が期待するのとは別の方向で工夫解釈してしまう場合があることです。
誤って理解をしないためにも、ともかく仕事の基本を教えておくことです。
それは自店にとってメリットがあることです。
細かいな行動の内容だけではなく、それを支える自店の「方針」「理念」をしっかりと教えることが大切です

しかし作業や接客トークだけを詳細に教えて、それをスタッフが実行したとしても、その場合は決してスタッフのレベルはそのマニュアル以上にはなりません。

ということは自店のクオリティはマニュアルで示していることが上限になってしまいます。

しかし人間は誰しも考える頭を持っています。それは場合によってはマニュアルで示している内容以上のことを考えつきます。

自店のクオリティを競合店に圧倒的に勝てるようにするためには、その人間の考える能力を最大限に活用することも必要です。

一方では上でも書いたように、その方向性が示せていないと、考えたものが店長や経営者の意図とそぐわない危険性もあります。

それを避けて、なおかつ考える能力を最大限活用するためには、自店舗の「方針」「理念」を教えることが重要なのです。

たとえば、接客の場合、自店舗の理念が「すべてのお客様に居心地よく滞在していただく」という場合です。

この理念をあらかじめスタッフにしっかり教え込んでいれば、仮にお客様の連れている赤ちゃんが泣き始めたとしても、スタッフが「これはおもちゃが必要だな」とか「水を飲みたいといっているのだと推測」と考えてそれを提供し、問題点を解決することができます。

それはその赤ちゃんを連れているお客様の満足度も上げますし、同時に周囲のお客様の満足度も上げるでしょう。

しかしこのような内容までマニュアルに書くことは、内容は膨大になりますし、すべての問題や状況は網羅できず、現実的に不可能です。

その点「すべてのお客様に居心地よく滞在していただく」という方針を教えておけば、
スタッフが臨機応変に対応してくれ、なおかつその対応が店長や経営者の意図に沿ったものになります。

このよう局面は接客にしても調理にしても山のようにあります。ですから自店舗の「方針」「理念」を教育することが重要なのです。

先輩が後輩を教える仕組みを作る

またマニュアルを最大限に活用するのであれば、先輩スタッフが後輩や新人を教える仕組みを作りましょう。具体的には以下のようなものです。

トレーナー制の導入
先輩スタッフのうち、仕事内容が熟練してきた人を「トレーナー」として認定し、スタッフ教育の一部を任せましょう。それは店長や経営者の教育の時間や手間を削減できるとともに、その先輩スタッフの自覚やモチベーションを喚起します。

時給との連動
さらにトレーナー制はただの称号だけではなく、時給とも連動させましょう。たとえばトレーナーになったら、時給が30円上がるなどです。

そうすることによって、トレーナーというものの地位も向上しますし、スタッフにとってトレーナーになりたいという目標を与えることになります。

スタッフの継続が売上につながる
マニュアルを整備して自店舗で定着させることは一朝一夕にはできません。
そもそもマニュアルの作成だけでも大変ですし、既存のスタッフがマニュアルの内容を理解し、実行するまでには、店長や経営者が相当の時間をかけて教育する必要があります。

しかしその最初のハードルを越えてしまえばマニュアルは定着し、何よりそれによってスタッフのモチベーションが上がって、退職することがなくなります。

このようにスタッフが継続すれば、スタッフの経験値が上がるため、接客のレベルも料理のレベルもアップします。
それは顧客満足度の向上につながるので、結果的に自店舗の売上アップをもたらします。

そのマニュアルの作成と教育だけではなく、以下の点も気をつけましょう。
店長はスタッフに気配りをする
店長は機嫌の良しあしで仕事をしてはいけない
店長はお客様の前でやたらむやみに怒ってはいけない店長は感情的になりそうな自覚がある時には、1人になって冷静さを取り戻す

雰囲気作りと笑顔

上記が実現できても、自店舗の雰囲気がよくなければ新人は定着しません。そのために必要なことが上でも挙げた「人間関係が悪く」ならない点です。

人間関係を良くして自店舗の雰囲気作りをするためには、何よりも笑顔です。店長は常に笑顔でスタッフに接しましょう。
それはスタッフをリラックスさせるので、普段以上の力を発揮させる源泉になります。

また店長や経営者が笑顔でいることによって、スタッフが話しかけやすくなるので、スタッフからの問題点や改善点の指摘がどんどん出てくることを促せます。

それも自店舗のクオリティをアップさせるためには重要なことです。

スタッフレベルとお給料
またトレーナー制だけではなく、スタッフのレベルそのものとも時給を連動させましょう。

スタッフのランク制を導入し、時給と連動させる
具体的には、マニュアルの熟達度と実行度をレベルに分けて、全スタッフをそのレベルでランク分けをしましょう。そして時給もそのランクに合わせて、アップさせるのです。それは間違いなく、スタッフの向上心を引き起こします。

店長、経営者の恣意で昇格を決めない
その際に重要なことは、店長や経営者の感覚でそのランクを決めない、ということです。感覚で決めてしまうとランクの納得度がないため、かえってスタッフ間に不満をもたらしてしまいます。そうならないようにするためには、以下の点を合わせて整備しましょう。

ランクごとの接客内容、調理技術のレベルをチェックシートなどで明文化して、全スタッフに周知する
ランクアップは店長や経営者が気付いた時に行うのではなく、定期的にテストを行いその結果によって行う

なにかを徹底しよう!
時給を上げることは、店として公式にそのスタッフを「ほめた」ことと一緒です。山本五十六が言っているように、ほめることは非常に重要で、それは言葉だけではなく、「実利」でも行うべきものです。

しかしほめるだけでは自店舗のクオリティは上がりません。時には駄目なことは駄目と叱り、その内容を徹底することも重要です。

たとえば「挨拶」でもよいでしょう。

シフトイン時、シフトアウト時に必ず周りにいるスタッフや店長に挨拶をするのを徹底することで、自店舗の雰囲気は格段に良くなります。

 

しかしそれは、店長が顔合わせるたびに口を酸っぱくして繰り返すような徹底さがあって初めて実現します。

新人教育とは、今教育する側のトレーニング準備や教育システムの仕組みがなければ、人は育たないということです。

特に飲食店の現場教育は、アルバイト・パートに労働力を依存しているため、常に一定のレベルを維持することは大変なことです。

大切なことは、教育システムとは、教える側とその教育を受ける側の意思疎通ができなければ、最大の効果が上がることはないのです。

ただ単に企業側、経営者側の一方的な教育システムでは、よい人材は育たないことを理解することです

 

 

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